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        家族性地中海熱とは


原発性免疫不全症候群の中の自己炎症性疾患に分類される常染色体劣性遺伝の遺伝性疾患です。
無菌性奨膜炎(腹膜炎・胸膜炎・関節炎など)発作と自然寛解を繰り返す周期性発熱発作が特徴です。
月1回程度の周期的な発熱を認め、発作時には急激な炎症により臥床を余儀なくされることもあります。
発症時期は5~20歳に多く成人でも発症します。
診断には遺伝子検査が有効ですが、原因遺伝子に異常が見られない症例もあり診断の補助として使用します。
またFMFに有効なコルヒチンの投与など診断的投与も診断の手助けになります。

FMFには典型例と不完全例があります


【 典型例の場合 】

FMFにおいてステロイドは無効ですが、コルヒチンが大多数の症例で有効です。
日本では成人は0.5〜1.0mg/日、小児では0.01〜0.03mg/日で処方される事が多いようです。
コルヒチンの副作用としては下痢・悪心・腹痛などの消化器症状が多く、他にも咽頭痛、発熱、
皮膚症状など中毒症状が出た場合は減量して対応します。


発熱   ほぼ前例に認められます。突然38℃以上の急激な高熱を出し半日~3日間持続
     して投薬なしでも自然寛解します。
     発熱間隔は2~6週間で4週毎が多いようです。
     女性患者の半数は月経時に発熱発作を起こします。

腹膜炎  欧米諸国では90%以上の患者に見られる症状ですが、日本では60%程度の 
     発生率です。
     急性腹症との識別が困難です。
     1〜3日程度持続し、自然寛解するのが特徴です。

胸膜炎  胸膜炎による胸背部痛が見られ、胸水貯留を認める事もあります。
     前胸部だけでなく背中の痛みを訴える事もあり、深く息ができず呼吸が浅く
     速くなる事が発作時の特徴です。  

関節炎  下肢の大関節(股関節・膝関節・足関節)の単関節炎で発症することが多く
     関節の変形を認めないなど非破壊的です。
     関節貯留液を認める事もあります。  

その他  奨膜炎の症状としては他に心膜炎・精巣奨膜炎があります。
     関節炎に伴い丹毒性紅斑を認める事もあります。
     また労作時の下肢・下腿の筋肉痛、安静時の猛烈な倦怠感など炎症発作時には
     臥床を余儀なくされQOLを保てなくなる事も多々あります。



【 不完全例の場合 】

典型的なFMFの症状とは違い、発熱持続期間が長かったり、38℃以上の高熱をみないなど多種多様な症状を呈します。
発熱の随伴症状としては激しい腹痛や胸背部痛が少ないのも特徴です。
コルヒチンが有効ですが、典型例に比べ増量して服用しないと効果が出にくい傾向にあるようです。



FMFの特効薬・コルヒチンに関して

【 コルヒチン 】

コルヒチンはイヌサフランやグロリオサと呼ばれる植物の根や球根に含まれるアルカロイド系の毒物。
毒性が強く消化器症状(下痢)の副作用が有名です。
古くから痛風の特効薬として使われてきましたが、近年その毒性から使用頻度は低くなっています。
細胞分裂時に染色体の倍加を誘発するので種無しスイカや倍化半数体の作出に応用されています。
この他に好中球の活動を阻害して抗炎症作用をもたらすため、痛風やリウマチ、家族性地中海熱、心膜炎、
アミロイドーシス、ベーチェット病、全身性硬化症、サルコイドーシスの治療に用いられますが現在はリウマチ治療にはあまり用いられていません。
痛風発作以外に対して鎮痛作用・消炎作用はあまり認められない事も特徴です。
また発病初期に投与されないと効き目が弱いという性質があり、発作の頻度を抑えるために長期に渡って投与されることもあり。
抗癌剤としての効果もありますが、薬効量と中毒量が非常に近いため実用化はされていないのが現状です。
更には遺伝子の突然変異を誘発する作用もあり、これはコルヒチンの一部分がDNA中の塩基と構造が似ているためで
遺伝子の複製が行われるときに正常な塩基と入れ替わってしまうことがあります。
結果として誤った塩基が新生されてしまうため、日本国内では服用中の妊娠・妊婦の服用は禁忌とされています。


【 コルヒチンの薬理作用 】

経口摂取後、50%(10-20%とも)が血漿蛋白質と結合して主に腎臓・肝臓・脾臓・消化管壁・白血球に蓄積されます。
心臓・脳・骨格筋への蓄積はほとんど見られません。
吸収率は環境のpH・胃の内容物等に左右されますが、肝臓の初回通過効果により100%ではありません。
消化管から吸収されると一部は肝臓で脱アセチル化され、未変化体(10-20%)と代謝物のほとんどは腸肝循環します。
このため血中濃度は服用30分-2時間後、服用から5-6時間後と2度の濃度が最大値になります。
経口摂取の場合は大部分が糞便、16-47%が尿、10-25%が胆汁へと排出されます。
このうち未変化体は50-70%と大きなウエイトを占めます。
24時間以内に摂取量の20%、48時間以内に27.5%が尿から排出されますが、摂取後7-10日間は尿からコルヒチンが検出されます。
中毒発作時の解毒法はなく自然に抜けるのを待つのみです。
グレープフルーツジュースなど、血中濃度を挙げてしまう食品があるので要注意!


【 副作用 】

嘔吐や下痢等の消化器障害などの中毒症状の他に白血球(特に好中球や顆粒細胞)減少・血小板減少・骨髄形成抑制による貧血(無顆粒球症を伴う・、多発性骨髄腫・脱毛・水腫・腸閉塞・肝腫脹・蛋白尿・血尿・再生不良性貧血等が薬剤の
長期服用による副作用として現れます。
稀にアレルギー反応として蕁麻疹が見られる事があります。
女性では閉経や月経困難が、男性では精子の減少が起こる可能性もあり。
副作用出現時は服用を中止することで症状を軽減させる事が出来ます。


【 FMFとコルヒチン 】

FMFの特効薬であるコルヒチンですが、服用の仕方に特徴があります。
痛風などのように発作の前兆を感じた時に服用するのではFMFでは十分な効果が得られません。
常用する事で血中濃度を一定に保ってはじめて炎症発作の抑制につながります。
よって診断がついた場合は一生涯服用する事になります。
また生涯服用する事により、FMF最大の脅威である腎アミロイドーシスの予防にもなります。
現在、FMFにおける日本人成人の最大投与量は2r/日となっています。
典型例では0.5〜1mg/日で効果が十分な効果が得られる症例が多いようですが
不完全型では2r/日服用でようやく効果が発揮される事も多いようです。
また2mg/日でも十分な効果が得られないケースもあり
コルヒチンと合わせてNSAIDsで対応していく事になります。
日本では少ないようですが海外の文献では炎症発作時は最大量を服用し
炎症発作が落ち着いた後に減薬していくといった方法もあり
常用0.5〜1mg/日、炎症発作時には追加で0.5mg服用するといった処方がされるケースもあるようです。
日本においてはまだ症例が少なく、実際診断治療にあたっている現場の医師も少ない事から主治医によりコルヒチン投与に関する認識の違いがあるように思います。
服用方法に関しても主治医により支持が違う事もあり、FMF患者同士でも違った服用法、
違った認識があるように思います。
今後診療の現場でFMFへの認識が広まるとともに、コルヒチン投与への統一した指針が広まる事を期待します。
また「顕著な効果」とされていますが、症状・作用の出方など個人差が大きい為「どの程度の投与量でどの程度の期間」
など具体的に明言されておらず、他の症例が参考にならない事もあり折角の特効薬なのに当事者の不安は尽きません。
今後効果の判定・試用期間などについても典型例・非典型例共に明確な参考例が示される事が期待されます。

FMFの責任遺伝子〜MEFV遺伝子とpyrin〜


家族性地中海熱の診断基準と診療ガイダンス

2011年12月に家族性地中海熱研究班により
「診療ガイダドライン(暫定)」が発表されました。
詳しくは研究班HPをご覧下さい!

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