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        自己炎症性疾患とは

自己炎症性疾患の定義

自己炎症(autoinflammatory)という概念は,1999 年に Kastner,O’Shea,McDermott らにより提唱されました。

自己免疫疾患,アレルギー疾患,免疫不全症による感染などの従来の免疫疾患の範疇に納めることができない疾患群に対してautoinflammatory disease(自己炎症性疾患),autoinflammatory syndrome(自己炎症症候群)という疾患概念が提唱されました。
自己炎症性疾患とは,全身性炎症を持続あるいは繰り返す疾患で,多くは発熱を認め,皮膚・関節・眼などの部位の炎症を伴います。
その原因として,多くは自然免疫系の機能異常により発症とされています。
自己抗体や自己反応性 T 細胞は検出されないため,獲得免疫系の異常に起因する自己免疫疾患と対比して考えられています。
現在,まだ新たな疾患概念が形作られつつある変遷期にある為,どのような疾患まで自己炎症性疾患の範疇に含めるか,意見が分かれています。
自己炎症性疾患を狭義に定義した場合,hereditary periodic syndrome(遺伝性周期熱症候群)となりここには,FMF(家族性地中海熱),TRAPS(TNF受容体関連周期性発熱症候群),HIDS(hyper−IgD with periodic feversyndrome=高 IgD 症候群)およびCAPS( cryopyrin−associated periodic syndrom)が分類されます。
また広義に定義した場合は痛風,Gaucher 病、リウマチ等の疾患まで含まれます。
自己炎症性疾患については,2 年半ごとに 1 回,国際会議(The International Congress on FMFand Systemic Autoinflammatory Diseases:FMF SAID)が開催され,疫学,病態,病因,定義,分類などについて協議されていて今後の新たな展開が注目されています。
国内でも毎年自己炎症に関する会議が開催され、病態に関する新しい論文や発表が行われています。




TRAPS(TNF受容関連周期性発熱症候群)
TRAPSは常染色体優性遺伝で、通常2週間から3週間間隔の弛帳熱で発症し、消化管の通過障害、痛みを伴う赤い発疹、筋肉痛、歯肉の腫脹を伴います。
主要な症状は繰り返す2週間から3週間続く発熱発作です。
発熱は悪寒戦慄、体幹部と上肢の筋肉痛を伴います。
典型的な発疹は赤色で皮膚や筋肉の炎症部位に一致した痛みを伴います。
消化器症状として、吐き気と嘔吐を伴う広範な部位の腹痛が通常みられます。
眼瞼結膜と眼窩周囲の腫脹の眼症状はTRAPSに特徴的な所見ですが、これは例えばアレルギーと言った他の疾患でも認められます。
以上のような特徴的な症状の出現の仕方は、発作期間の長短により異なります。
アミロイドーシスはTRAPSの最も重篤な合併症で、尿中に巨大な蛋白が出現し腎不全を引き起こします。



PFAPA(Periodic fever with Aphtous Pharyngitis Adenitis )

PFAPA症候群は、非遺伝性の自己炎症性症候群であり、本邦の周期性発熱症候群では最も高頻度であると考えられて
います。
主な症状は3−6日の発熱発作(periodic fever)
発熱に随伴してアフタ性口内炎(aphtous stomatitis)、咽頭扁桃炎(pharyngitis)、頸部リンパ節炎(adenitis)をきたすことを臨床的特徴としています。
5歳以下で発症することが多いとされますが、成人発症例を含めて発症が遅い例も報告されています。
なお病因は不明であり、変異遺伝子は同定されておらず、扁桃炎の病理所見も非特異的慢性炎症が認められるのみ。
小児発症例では10歳頃までに治癒することが多く、予後は良好とされています。
発作期の治療としては、短期のステロイド投与(発熱以外の症状は遷延し、次回発作までの期間が短縮されるので、ステロイド投与を推奨しない専門医もいる)、Cimetidine投与(作用機序不明:15−20mg/kg/日で使用され、約3分の1の症例で発熱発作が完全に消失、残りの症例においても部分的に有効とされる)、扁桃摘出/アデノイド摘出、
コルヒチン投与、IL-1β阻害療法などの有効性が報告されています。




HIDS(Hyper-IgD with periodic feversyndrome)
乳児期に発症し好発年齢は1~5歳。
4-6日程度持続する周期性の発熱発作が大きな特徴 で、発作の際には頭痛・嘔吐・下痢・腹痛・リンパ節腫脹を伴う。
その他に、肝脾腫、発疹、関節痛、関節炎、アフタ性口内炎を伴います。
海外報告では血清IgD 高値を取ることが多いのですが(80%以上の症例において高値)
現在日本で判明している症例では、そのほとんどがIgD値は正常となります。
腹膜炎に続発する腹腔内癒着が10%程度、関節拘縮、アミロイドーシス も数%に見られ、重症例では精神発達遅滞や
痙攣を合併する症例もあります。
また、乳児期からの発熱発作による学習の遅れが約半数の患者で見られ、26.4%の患者が成人後も職に就くことができず社会的機能に障害を来たしているとの報告が欧州でされています。




CAPS
CAPS=クリピオン関連周期性発熱症候群(Cryopyrin-Associated Periodic Syndrome)は生後〜乳幼児期にかけ
発症します。
繰り返す発熱、頭痛・髄膜炎、水頭症・発達障害、膝関節の強い痛み、それに伴う歩行困難、視力低下(弱視)、進行性難聴、じんましん、10〜20年経過後臓器障害といった、さまざまな症状があります。
CAPSには重症度に分けられた以下の3つの疾患が含まれています。

● CINCA症候群 (重症)
CINCA症候群による持続性の炎症は、身体のいくつかの部位に損傷を引き起こします。
CINCA症候群の患者の多くに、関節、脳、眼、耳をはじめとする部位に炎症性の損傷が認められ、臓器にアミロイド
蛋白が沈着することによるアミロイドーシスがみられることもあります

● Muckle-Wells症候群 (中等度)
Muckle-Wells症候群(MWS)は進行性聴覚障害やアミロイドーシスによる腎障害など身体のいくつかの部位に損傷を
引き起こす恐れがありますが、CINCA症候群にみられるような慢性無菌性髄膜炎は認めません。もしくは軽度です。

● 家族性寒冷蕁麻疹 (軽症)
寒冷刺激が原因で発作性に炎症が起こります。通常はどの身体組織にも永久的な損傷を与えることがないため、最も重篤度が小さいものと考えられます。

※詳しくは関連リンク先よりCAPS家族会のHPを参照してください

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